10月 part 3-1

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「何か飲みます? 日本酒とか」  お品書きを手渡そうとした七星を、手のひらで制する。 「いや、いい。プライベートでまで酒、飲みたくねえよ。俺、ウーロン茶」 「そうですね、今日はお酒やカクテルのことは忘れましょうか」  七星はふわっと笑って、店の内線でお店の人を呼んだ。  頼んだのは会席料理のコースだ。薄紅梅色の着物を着た仲居さんがしずしずと料理を運んでくる。  10分で足が痺れた俺は、早々に正座を諦めることにした。カジュアルにあぐらをかいて、次々と出される料理を口に運ぶ。  胡麻豆腐。  銀杏と鳥ささみの雲丹和え。  しめじの土瓶蒸し。  焼き舞茸のみぞれ仕立て。  秋刀魚の香り焼き。  伊勢海老の香味バター炒め。  さすが七星おすすめの店だ。どの料理もとてもおいしい。料理がおいしいと話も弾む。楽しすぎて、あっという間に時間が過ぎていった。
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