6月 part2

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 閉店後、オーナーが七星を呼ぶ。 「入店祝いだ。世界大会で優勝したカクテル〈クイーン〉を作ってやるよ」  オーナーがカウンターに立つ。  氷の角を取り、お酒をメジャーカップで測り、ミキシンググラスに入れていく。  ミキシンググラスに静かにバースプーンを入れ、ほとんど音も立てずに回していく。まるで三角錐を描いているかのような、優雅な動き。流れを止めないように、バースプーンをミキシンググラスからそっと抜く。そして、ストレーナー(濾し器)を通してカクテルグラスに注ぐ。  オレンジの輪切りと、オレンジの香りがするミントで飾りつける。オレンジ色と緑色の対比が美しい。  何一つとして無駄のない、流れるようなオーナーの動き。  カウンターに立って1分もたたないうちに、最高のカクテルが完成してしまった。  深みのある琥珀色に染まったカクテル、〈クイーン〉。  こんなの、真似しようとしてできるもんじゃない。俺も初めて飲んだ時、感動を通り越して脱力してしまった一品だ。 「うわあ、これは素晴らしいです。気高く、優雅な味ですね。女王の矜持の高さを感じさせる一杯です」  クイーンを味わいながら、左手をほおに当て、蕩けるような笑顔で言う七星。…吟遊詩人かよ。よくそんな小っ恥ずかしい台詞、さらっと言えるよな。  だがオーナーは上機嫌だ。鼻歌でも歌い出しそうな笑顔で、七星にこう言った。 「そうだろう。この味をよく覚えておけよ、七星」
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