10月 part 3-3

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「七星、俺…」 「おいしかったですね。じゃ行きましょうか。すみません、お勘定お願いします」  俺の声に被せ、七星は部屋の内線で仲居さんを呼ぶ。  自分が払うと言い張る七星を抑え、二人分の勘定を済ませ、外に出る。  東京メトロの赤坂見附駅まで一緒に歩く。曇っていて、月も星も見えない夜。冷たい風がほおを撫でていく。  となりを歩く七星。俺は時折、カーキ色のニットを着た七星を横目に見る。そして七星の子ども時代に思いを馳せていた。 「じゃ、拓叶さん。今日はありがとうございました。また明日」  駅の改札に消えていく七星の姿を見送る。  一瞬、追いかけようかと思った。でも呼び止めたあと、なんて言えばいいのだろう。自分が何を言いたいのか、自分でもよく分からないっていうのに。  なあ七星、俺は…。  俺は、おまえのことを…。
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