一章

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お会計を済ませて外へ出ると、辺りは薄暗く会社帰りのサラリーマンや大学生と思わしき軍団が繁華街へと吸い込まれていた。 繁華街は賑わっており、店の前で客引きをするスーツを着た体格の良い男が声を張り上げている。 そういえば今日は世間で言う花の金曜日だ。この人の多さにも納得できる。自由に仕事をしていると曜日の感覚が鈍くなるのは仕方ない事だ。 月曜日から金曜日まで嫌々仕事に向かい、土曜日、日曜日と束の間の休息を求めて働く。そしてまた月曜日からその束の間の休息を目指して働く。 俺には到底こんな事は出来ない。 普通に働くサラリーマンを尊敬する反面、哀れにも思えてしまう。 「じゃあ、俺はこれで! また連絡するわ」 坂東は俺には手を振り、繁華街の方へと姿を消していった。 これから一杯やるつもりだろうか。 そんな事を思いながら、夜の街を歩いた。
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