二章

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「日付は一週間後の十月十日。 時刻は昼の十二時。 集合場所はA駅の中央改札口の前だ」 汚い字でメモを取る。これは寝起きだから汚いのでは無く、もともと字が汚いのだ。これでよく絵が描けるものだとウルシダは自分に感心した。 「で、その内容なんだけど漆田ってあのテレビ番組知ってる? ほら、他人同士が共同生活するやつで、それでそのメンバーの中で恋したりする…… 恋愛バラエティて言うのかな」 耳で坂東の声を聞きながらキッチンへと向かったウルシダにはその番組がよく分からなかった。 もともとテレビはあまり見ない。 見たとしてもニュース番組くらいだ。それに他人の恋愛を見ている余裕などウルシダには無い。 キッチンでコーヒーをドリップし、一口飲むと再び部屋へと戻った。 「いや、俺は知らないな。でそれがなんなんだ? 」 「婚活パーティーの事だよ。 一週間後の十月十日から十月十六日までの一週間、その婚活パーティーに参加する人と共同生活を送るんだよ」 ウルシダにとってその言葉の意味がよく分からなかったが、今の婚活パーティーというのは共同生活が主流なのだろう。 坂東がいつもの調子で話している事がウルシダと世間のズレを表しているように思えた。
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