手記

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坂東へ 人は愛し愛される生き物だと俺は思う。誰しも生誕を祝われ、死に頬を濡らす。 しかし、残念ながらみんながみんな俺と同じ考えではない。生誕を祝われる事なく虐待され、一度も愛される事なく死を待つ子供。死を悲しむどころか莫大な遺産を残して死ぬ老人に目を輝かせ、死というXデーを待ち遠しにする者。 誰もが正しく愛される訳ではない。 そして、誰もが自分を愛してくれる人を選ぶことは出来ない。 なら俺は自分が愛したい人を見つけよう。俺はそう決めたのだ。 そして俺は見つけたのだ。自分にとって何よりも大切で愛したい人が。 あの時、俺は一企業の社長だった。みんなに慕われ、頼られる存在だったがそれでは物足りなかった。 ちゃんと心から愛し、愛されたかった。 今はその人と結ばれてスウェーデンのストックホルムにいる。ここでの生活は慣れないし、子供にも恵まれる事はないと思うが二人でなんとかやっていけている。 会社を任せてしまって申し訳ないが、俺たち二人の事はどうか忘れてほしい。 2021年 10月10 漆田より
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