二章

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しかし、急に一年前から絵が売れ出したのは良く考えれば奇妙な事だ。それまでは描いた作品が必ず売れる事もなく、家の奥に眠っている作品が殆どだった。 たまに自分でも出来がいいと思った作品が驚くほど安い値段で売れるくらいだった。それでも売れるだけマシだと思い、その安い値段で売る。丹精込めた作品にそれだけの価値しかないと現実を突きつけられたものだ。 それが一年前から急に変わった。 はじめは何かの偶然が重なって、売れているのだろうと思っていた。ウルシダの販売方法は主にパソコンを通しての販売だった。 偶然ではないと確信したのはそれからすぐの事だった。作品を描き上げてネットで販売したところ、その次の日には買い手が見つかっていた。それも驚くほど高い値段でだ。 それにその作品は特段に出来が良いという訳でもなかった。 ついに作品の価値が認められた。長年の苦労が報われた瞬間だった。
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