二章

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無愛想に返事をしようと思ってしたわけではない。昔から初対面の人とは無愛想な態度でしか接せないのだ。直そうとは思っているのだが、この歳になるとなかなか直せない。 今から共同生活をする仲間達とは良い関係を築きたい。それが本音だ。 無愛想な返事をしたせいか二人とも黙ってしまっていた。駅構内に流れるアナウンスが先程よりも大きく聞こえる。 「他の人はまだですかね」 沈黙に耐えきれず、発した言葉は当たり障りのないものだったが、これが無愛想な返事に対する精一杯の償いだった。 「遅いですね」 彼女はそう言うと手首に巻いてある時計に目をやった。 それを見て構内にある電子掲示板を見る。時刻は十二時五分前。 そろそろ来てもいい頃だ。 またしても静寂が三人の間に流れた。何か話さないといけない。 「あっ、そうだ。 お二人とも名前を聞いていなかったですね。 僕は漆田です」 そう言ってまた頭を下げた。 これは気の利いた発言をしたと思った。
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