二章

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バスが発車して一時間くらいは経っただろうか。その間、誰も口を開く者はいなかった。異様な雰囲気とも思えたがその場の雰囲気に流されて誰とも話す気にはなれなかった。 ただ少し気になったことがあった。長距離の移動に少し疲れ、背伸びをしようと立ち上がった時、車内にいる全員が携帯を持って誰かと連絡しているのが見えた。 なぜ連絡していると分かったのか。それは簡単な話だった。ただ視力が良かったからだ。 はっきりとは見えないが某SNSのトーク画面が見えたのだ。 もちろん誰と連絡をしているのかまでは分からない。ただその光景が異様に見えた。現実では今から共に生活する人間とはコミュニーケーションを取らず、ネットを利用してこの場にいない人とコミュニーケーションを取り合っている。 時代を感じてしまうと共に寂しくなった。 それからバスはどんどんと都会のビル群を抜け、気づけば辺りは山々に囲まれていた。 対向車の数もどんどんと少なくなってきている。
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