一章

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「おー!きたきた! 」 居酒屋の暖簾をくぐると店員のいらっしゃいませの掛け声より先に坂東の声が耳に届いた。 昔から変わらない馬鹿でかい声。久しぶりに聞いたその声に俺は懐かしさを覚え、坂東のいる席へと向かった。 「久しぶりだなぁ! 漆田。 二、三年ぶりか? 」 席へ着くや否や話し始めた坂東は手を挙げて店員を呼んだ。 「あぁ、そうだな…… 小学校の同窓会ぶりか? 確かあの時も二、三年ぶりかとか言ってたよな」 そう言ってる間にも坂東は店員に生ビールを注文していた。坂東とは小学生からの親友だ。 小学校六年生で初めて坂東と遊んだ。俺とは正反対の人間で坂東は明るく活発で誰とでも友達になれた。 そんな坂東に俺は身を預ける事で新しい世界へと連れ出してもらったのを今でも覚えている。 まあここまで正反対だから仲良くなれたのだと今では思う。 「まあ、募る話もあるけど、まあ……なんだ。 最近はどうなんだ? まだ描いてんのか? 」 グラスを交わし、坂東は生ビールを口に注ぎ込んだ。夏を過ぎたこの季節でも生ビールは美味しそうに見えるから不思議だ。
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