一章

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「なるほどね。 まあ良かったじゃないか。 やっとお前も落ち着いた訳だな」 こんな上から目線で言っているが、俺が言えた立場ではない。しかしこうでも言わないと俺の精神が持たないのだ。 「一度も告白したことなければ告白された事もないお前に言われたくはない! 」 白い髭をまたしても生やした坂東は笑いながらそう言った。 「おいおい、失礼だな。 告白された事くらいあるさ。 中学の時…… 」 そこまで話し口を塞いだ。 言わなくていい事を言ってしまったと思ったが、坂東の顔をチラリと見ると時すでに遅しである事に気づいた。 「あー、そういえばアレか。 南野のヤツな。 いやー、まさか漆田がアレを告白と数えていたなんて…… 」 白い髭を生やした坂東のニヤニヤした顔が、俺のプライドを傷つける。こんな嫌味な奴に坂東の奥さんはなぜ惹かれたのだろうか。案外俺と同じで一緒にいて気が楽だからという理由くらいしか思い浮かばない。
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