31人が本棚に入れています
本棚に追加
「いや、あれは違う。 あれは告白じゃない」
必死で俺が訂正すればするほど坂東の表情は笑みをこぼす。
あれは中学一年生の時だった。確か南野ソラが放課後に体育館の裏に来て欲しいと坂東を介して俺に言ってきたのだ。
坂東と南野ソラは幼馴染だった。坂東の話によれば何でも話せる友達であまり顔は良くない。南野ソラと同じ小学校ではなかった俺は当時それくらいの事しか知らなかった。
正直、体育館の裏に呼ばれた理由もピンとこなかった。一体俺に何の用事だろうと思っていた。
体育館の裏についた俺は桜の木の下で立ち竦む南野ソラを見て、坂東の言う通り顔は良くないと思ったのが第一印象だった。ボサボサの髪。頬には無数のニキビ。 味気のない眼鏡。
なぜこんな奴が坂東の幼馴染なのか不思議でならなかった。
そして南野ソラから言われたのは、「好きです。付き合って下さい」と言うまさかの言葉だ。
人生で初めて告白された相手が南野ソラ。俺は言葉を失った。
当時まだ中学生の俺にとってはその告白は何も嬉しくはなく、ただの恐怖としてしか感じられなかった。
俺は逃げるかのようにその場を立ち去ったのだ。返事もしないまま。
最初のコメントを投稿しよう!