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那須
『見た目に反して不器用なんだね』
それが始まり。
3時限目が終わる頃に登校してきた那須に初めて声を掛けた。
校内でも有名なヤンキー。
『ヤンキー』って変な言葉。
つまりただの悪餓鬼。
授業のない間に昼飯を買っておこうと寄った購買で、その悪餓鬼と出会った。
名前と姿は知っていた。
目が合えば殺られるとか、付き合えば孕まされるとか、スレ違ったら財布盗まれてるとか。
まぁよくそれほどのネタを撒いてこれたよね、と逆に誉めてやりたくなるような噂の持ち主。
明るい栗色の髪はさらさらと揺れ、確かにキツい目付き、通った鼻筋に薄い唇。
綺麗な顔だけど、冷たそうな印象をもたせる。
笑えば案外可愛いんじゃないかな?
男だけど。
購買の横にある自販機の前にしゃがみこむ彼を見つめてそう思った。
『・・・んだよ、ジロジロ見てんじゃねぇ』
ギロッと睨み付けてくる那須に肩をすくめて見せる。
『一応先生だからね。生徒がしゃがんで困ってたら気になるでしょ。』
那須の手元を指差しながらそう言えば、『あ"あ"?』と余計に睨まれた。
喧嘩でもしたのか、カットバンだらけの指が握っているのはカップ麺。
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