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それを覆う薄く透明なフィルムが剥がせないのか、カリカリと深爪で引っ掻いていて。
『見た目に反して不器用なんだね。』
猫がドアを引っ掻くような仕草にクスッと笑ってしまった。
『うっせぇな。こんなもん、適当にこうやってれば剥けんだよ。』
・・・へぇ。
無視するかと思ったけど。
意外にもちゃんと返事をしてきた那須に、少しだけ驚かされる。
そうして隣にしゃがむと『かして』と手を差し出した。
『あ"ぁ?』
『すぐにそうやって牽制するんじゃないよ、餓鬼。良いから貸して』
睨む那須からヒョイッとカップ麺を奪う。
そうしてそれを引っくり返すと、後ろに貼ってあったシールを指差す。
『これ、使えば簡単なんだよ』
シールを指先で摘まみ、勢いよくピッと引っ張って見せる。
シールに付いて透明フィルムが破れるのを、那須は『おぉ・・・』と感心したように見つめていた。
『はい、これで次からは自分で開けられるな』
手渡しながら笑えば『どーも』と小さなお礼が聞こえてきて、また驚かされる。
立ち上がり見下ろした那須は『知らんかった・・・』とブツブツとぼやいていて、その姿は普通にどこにでもいる男子生徒にしか見えない。
これのどこが怖いのかねぇ。
担任も学科の教師も、触らぬ神になんとやら・・・みたいな態度で那須を敬遠していて。
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