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『すぐにそうやってケンカ吹っ掛けてたら疲れるだろうに。変なヤツだね、お前。』
ネクタイを直しながら呟けば『チッ』と舌打ちが聞こえてきた。
授業時間終了を知らせるチャイムが鳴る。
何も言わずに校舎へと向かう那須を見送り、僕も購買へと足を向けた。
あの日から、僕と那須は繋がった。
時には激しい喧嘩を止めに入った。
裏庭で昼寝している君に毛布も貸してやった。
他の教員に食って掛かる君を叱りもした。
やっぱり、カップ麺を開けるのが下手くそな君に代わってフィルムを剥がしてあげた。
『これ、あんたが飼ってる犬?』
休日、散歩していて偶然出会った僕に、ぶっきらぼうにそう言った君。
『そ、可愛いだろ~』
デレデレと自慢する僕に『あんたのが餓鬼みてぇ。』と笑われた。
その笑った顔が年相応に見えて。
誰も居ない3年校舎を歩く。
カツン、カツン、と響く足音がやけに大きく聞こえた。
目指した教室の扉を開けば、そこにはゴールデンレトリバーみたいな毛並みの手の掛かる生徒。
「・・・・・・・・・」
何も言わずに腕を伸ばしてきた那須を、甘やかすように抱き締めてやる。
「卒業おめでとう。これで僕の手を離れるね、君は。」
「・・・・・・・・・・・」
「僕も異動だし顔見なくて済むからスッキリでしょ」
「・・・・・・・・・・・」
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