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待ち合わせてはいないけど、あの教師のことだから現れる気がしていた。
人気の無くなった3年校舎。
廊下の向こうから聞こえてくる足音に、ほらな、と笑った。
笑ったつもりだった。
けど・・・扉を開いたアイツを見たとたん、これが最後なんだという気持ちが一気に押し寄せた。
「女かよ。」
情けなくも泣いてしまった自分。
ポンポンと背中を叩く大きな手と、初めて感じたアイツの温度。
それがますます目頭を熱くした。
女々しい態度だった自分、今なら殴ってやりたくなる。
「・・・バカらしい、帰ろ」
ゴミを握り潰し椅子から立ち上がる。
ここであの教師が通るのを待って、どうしようってのか。
自分でも分からない。
伝えたい事がある訳じゃない。
昭和の漫画じゃあるまいし、お礼参りがしたい訳でもない。
ただ、何となく・・・
「いらっしゃいませ」
新たに来客を告げる店員の声を聞きながら、ゴミ箱にペットボトルを突っ込む。
そうして出口に向かおうと振り返ったその先には
「あれ?那須だ」
休日のくせにスーツを着こなした教師が立っていた。
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