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暎尚
「あれ?那須だ」
目の前に急に現れた先公にグッと息が詰まった。
散歩で歩いているところを偶然を装って捕まえようと思っていたのに。
こんなの、、、予定と違う。
「なに、何か付いてる?」
動揺して思わずガン見していれば、自分の顔を擦った。
「・・・・・・よう」
やっと絞り出した一言は素っ気ないもので、自分でも呆れてしまう。
でも何も他に言葉が見つからなかった。
「帰るところかな?」
「・・・・・ん」
「そっか、もう暗いから気を付けなよ。」
ニコニコとそんなことを言うコイツにプッと笑いが溢れた。
「ガキじゃねぇよ」
「まぁね、那須なら襲われても返り討ちにするだろうけど。」
ケラケラと笑うその様子に、突然のことに緊張していた体が解れていく。
「あんたは?なんでスーツ?」
「ん?ああ、これ?」
ボソッと尋ねれば自分のスーツに視線を落とす。
休日なのにスーツって。
犬の散歩はどうした、あのご自慢のデカイ犬の散歩は。
「休日でも学校行かないとね、異動決まったし。」
「・・・・・・・・・・・・」
「仕事は山ほどあるのに時間が足りないよねぇ」
「・・・・・・・・・・・・」
教師も大変なんだよ、とかなんとかため息混じりの言葉が頭をスルーする。
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