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この春から大学生になる私は、大学付近のアパートで夢の一人暮らしを始めるはずだったーー なのに、 「お母さん…ここは?」 「ごめんね。ほら、やっぱり…その色々と、心配だから…ねぇ」 と曖昧に言葉を濁しながら苦笑いをこぼす母を見て悟る。 父が最後の最後で渋ったのだ、と。 それでもあの父がここまで子離れしてくれただけでもありがたいと思わなければいけないのだろう。 引っ越し当日の今日、私がいる場所は大学と同じ敷地内に建つ学生寮の前だった。
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