5章 伝説の勇者

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とろけるメタル とろけるメタルは、ものすごく素早く、物理以外無効化する、個体数の少ない種族だ。 住処を転々とするが、このところ悪魔から現金輸送の仕事を受けて、各ダンジョンと不動産会社、魔物銀行などをまわる役目を担っている。 「ウィリン君、私は君のお母様から君の身の安全を頼まれています、エルサルバドルです」 周囲を山で囲まれた高台に、彼らの住処はあった。 なんとかドラゴンを留めるための平地がギリギリ空いており、そこに待機させて、中の洞窟で話をする。 「ねーねー、きょうのおやつはなあに?」 ウィリンは、殺風景な部屋の真ん中に、ポツンといた。 とろけるメタルはいつも同じ顔をしているので、悪魔でも感情が読めない。 「ええと、そうですね、君のお母様から、餅を預かっています」 「やったー、おもちだー」 とろけるメタルは、時に上級魔法も使いこなす賢い魔物のはずだが、ウィリンはどうも様子が違う。 「ともあれ、この家は今や勇者に狙われていて、非常に危険です。さあ、病院の近くへ引っ越しましょう」 「?・・・うん!」 シュッ シュッ シュッ ウィリンは素早く足元を移動すると、家の中のお菓子をかき集めた。 「るっる、るるっる、るる」 とてつもなく音痴な鼻歌。 入院中の両親が「あの子を残して死ねない」と言っていた意味がエルサルバドルにはわかった気がする。 「よし、では行きましょう」 そうエルサルバドルが促した時、玄関口から大きな咆哮と熱風が伝わってきた。 グゥアアアアア!!! 何者かが、ブロンコ氏所有の翼竜、不動産会社の移動手段の要と戦っている。 「あのドラゴンは貴重なんですよ、どこの馬鹿ですかね。ウィリン君は下がって、決して外に出ない事!」 「うんっ!」
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