5章 伝説の勇者

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燃え盛る火炎の渦に囲まれている男が、剣を一振りすると、炎が割れた。 「この俺様を手こずらせるなど、たいしたドラゴンじゃないか」 短く刈り込まれた金髪に藍色のマントが大きくなびいて、薄い魔法のヴェールを作り、炎の渦から身を守っている。 「くらえ!〈ホーリーインパクト〉!」 男がそう叫ぶと、空に無数の白い球体が形作られ、飛龍の上空に集まり、小さなきらめきが空気中に舞う。そしてまるで雷が落ちたような衝撃。銀白の柱状エネルギー体がそのドラゴンを天から貫いた。 「あれは!」 間違いない、あれは天使魔法!人間ごときが気軽に使えるものではないはずだ。 「なかなかしぶといな、まだ息があるとは。フフフッ、この一振りで終わらせてやる!貴様のexpと金、糧にさせてもらう!」 男が剣に力を込める、周囲の空気が張り詰め、その剣を中心に半径30メートルの空間が圧縮されるような感覚。 「あの剣は、まさか!?」 エルサルバドルは知っていた。 天界には『なんでも切ることができる剣』が存在していることを。 しかしそれは戦いの天使しか使うことができない宝具であることも知っていたし、同時に、自分が堕天する以前、 そういった宝具を研究している天使がいたことも思い出した。 〈ブラックホール〉 エルサルバドルは敵の前にその姿を晒すと同時に、魔法によって空間を捻じ曲げ、その男を闇へ葬ろうとした。 しかし、その勇者が背につけたマントが、倍の大きさに広がり、魔法で作られた重力場を防いでいる。 「フン、ムダだ!この俺にはどんな魔法もきかん、新手か?ちょうどいい、まとめて死ね!」 男が剣を振り抜く瞬間、エルサルバドルはしゃがんで魔法障壁を張った。 ジャキン 音ともに、障壁の上部分と、翼竜の翼右半分が切断された。 !? とろけるメタルのウィリンが、その男の背中に体当たりをかまし、体勢を崩したのだ。 「このー!」
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