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弐
昨日から天気予報では台風の接近を知らせていたが、休校の知らせはなく、明空は仕方なく学校へ行く準備を始める。
「明空、今日は自転車はやめておけよ。ハンドルを取られたら危ない」
「分かった。父さんも仕事?」
「社会人になると、なかなか休めないんだよなあ」
「俺らだって休校にならないと休めないよ」
「そりゃそうか。もう台風の時は休み!って政令か何かで決めてくれればいいのにな」
小学生のような言い分だ。
でも確かにそう思う。
「気をつけてな。海には近づくなよ」
「うん。父さんもね」
玄関を出ようとすると、母が見送りに出てきた。
「二人とも、待って。はいお弁当。気をつけてね。風も強くなってきてるから」
「ああ、ありがとう。行ってくるよ」
「行ってきます」
「行ってらっしゃい」
心配そうな母に見送られ、明空と父は互いに手を上げて反対方向に歩き出した。
学校は高台にあり、坂道を三つほど折り返す、運動部のトレーニングにはもってこいだが通学には迷惑な立地にあった。
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