『いけず』と『いけず好き』

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買い物を済ませた帰りがけ、 商店街を外れた所で俺は気になってた事を口にした。 「ねえねえユキさん、、、 さっきから変な奴、ついてきてない?」 俺はユキさんに並んで声を潜めた。 「わかってる」 「追い越したり、離れてずっとこっち見てたりしてさ、、、なんか怪しいよ」 不審な動きをする男はやがて、俺たちが河川脇にある石畳の暗い通路に続く階段の側まで来ると、 「本家の奥方から伝言がある。 、、、ちょっと顔かし」 追い抜きざまに、ユキさんが時折使うようなイントネーションで呟き、道を()れて階段を降りた。 「ね、ユキさん。そっちはやめようよ」 俺には顔も向けず、綺麗な目元を少し歪めたユキさんが男の背中を追って降りていく先は、、、、 誠二さんが、 『夜はカオスだから避けて帰れよ』 って教えてくれていた場所だ。 俺の制止が聞こえてるのかいないのか、それでも男の後に続くユキさん。 仕方なくその後ろをついて行った。 階段下はすぐ川に面していて高架下トンネルみたいになっている。 道の片側は石壁だし、反対側はさらさら流れる川とコンクリートの柱があるだけ。 道路の下だから昼でも暗い。 聞けば違法薬物の売買もされてるって言うし、すでに怪しい人たちも、ちらほらいるし、、、。 けどユキさんはまるで慣れてるかのように、脇目もふらず歩いて行く。 トンネルを抜ける頃、 男はようやく止まって振り返り、ユキさんに向き合った。
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