Ripples on my mind

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週明け、俺はバイト探しを始めた。 いくら家賃が無いとはいえ、その他諸々の費用を親に負担させるのも気がひけるし、亮介さんの性格上、仕送りをそのまま渡した所で受け取ってはもらえない。 せめて、食費くらいは自分で払いたいと思うのは本心だけど、プラスしてユキさんへの手前もある。 亮介さんにとってのユキさんは特別待遇だからいい。 だけど俺はただの居候だ。 スマホ片手に亮介さんと歩き回った辺りをうろうろして、店の張り紙やバイト探しのサイトで目星つけてると、近くの飲食店が何件かヒットした。 「あ、、、ここ確か、、、」 旧公会堂の地階にあった、 Bar Prejir (プレジール) がバイト募集をしていた。 「へえ、、、時給もまあまあ」 コンビニは高校んとき散々やってて慣れてるとはいえ、食傷ぎみだった。 何しろここの建物が気に入ったというのもある。 自然と足が向かい、旧公会堂一階のアーチ入り口に立つと、箒を持った奥村さんが出てきた。 「、、、あれ、君は、、、先週亮介と来てた、えーっと」 「居候です」 「汰士くんだ!」 指をさして笑った。 「はい、あの、こ、ここでバイト募集してるって、サ、サイトで見て、、、」 落ち着け 指さされたくらいで、、、 落ち着け 急いでスマホをかざした俺に、ニコニコしながら奥村さんは、 「うんうん、してるしてる!  もしかして来てくれるの?」 箒と塵取りを置いた。 「お、俺、いや、僕未経験なんです。 そ、それでもいいですか?」 「週3、翌日の1時過ぎまでいける?」 「み、未成年なんで酒は飲めませんけど、、、」 「あははは、、、酒は飲ませないよ。 ビジネス街だから土日は休みなんだけど、 、、、どうかな? 土日稼げないとだめかな? 何ならホテルの客室清掃の仕事もあるけど」 「いいえ! 大丈夫です! あの、、、採用してもらえますか?」 「亮介ん家の預かり君なら即決だよ。 いつから来られるの?」 「いつからでも、全く、全然、大丈夫です」 「なら明日からでも入ってもらおうか」 うわー、とんとんだ! 「はい、よろしくお願いします! あ、、、」 大事なこと言っとかないと。 「何?」 「あの、実はですね、 僕は、その、、、 緊張したり慌てたりすると、、、」 「うん?」 「きっ、吃音が、、、」 奥村さんは了解したように少し顔を動かした。 「君が負担でなければ全く構わないよ。 細かい待遇はサイトの詳細見といて。 いやー助かるよ、俺も忙しくてさ。 あ、、、 でも亮介の奴が反対するかな」 「亮介さんが? ですか?」 「うん、、、」 不思議そうに見上げる俺に気づくと、 「ああ、ほら、お兄さん、君の事うんと可愛がってたの亮介も知ってるから、、、。 『酒を扱うバーなんて駄目だ』って言うかなと」 慌てて手を振った。 「あ、そのへんは大丈夫です。 俺もう大学生ですし、同居人としても自由にしていいって生活許可もらってますんで」 「そう、、、なら良かった」 奥村さんは目を細めて微笑み、名刺をくれた。
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