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 その万年筆は、まるで光を放っているようだった。磁力というか、人を引きつける特別な力を持っていた。  リサイクルショップの自動ドアを抜けると、仕分けをしていた店員が、いらっしゃいませと言って、こちらを見た。  元は昔からある古物商だったらしいが、こざっぱりと整理したようだ。照明も明るい。雑貨の他に、古本や古着も扱っている。  ぼくは時々、少し遠回りして立ち寄る。宝探しの気分だ。  その万年筆は、鍵のかかったガラスのショーケースの中にあった。黄色いサテンの布の上に陳列してある。銀色でやや太めだ。全体に、唐草模様が薄く彫られていた。ブランドのマークは老舗メーカーのものだ。ぼくは書く物に、こだわったことなどなかった。それなのに、ここに通っていた今までこそ、これに巡り合うための道筋だったのだと思った。それに、この値段なら買えないことはない。 「この万年筆、見せてくれんか」  今、まさに言おうとしていた言葉を隣にいる男が言った。 「あの、それ、ぼくも見せてほしくて」     
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