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 デパートのガラスの向こうに、六花さんの姿が見えた。思わず、手を振った。  肩までぐらいだった髪が、長くなっている。前より、大人びて見えた。水色のニットキャップが似合っている。  入口のドアを押して入って、ぼくのところまで来た。「こんにちは」と言う声が、少し震えている。 「こんにちは。久し振りだね」  寒かったのか、顔がこわばっている。  先に喫茶店にでも入った方が、落ち着くだろうか。 「寒いね。向こう、雪降ってた?」 「はい……降ってました」  やっぱり、声が震えている。 「手紙やメールでやりとりしてるのに、こうして会うと照れるね」  ぼくは、六花さんの気持ちをほぐそうと、笑いかけた。 「会場は6階だけど、先に何か温かいものでも飲む?」  歩き出したはずが、六花さんがついてこなかった。  具合でも悪いのかと、近づいて顔をのぞきこんだ。 「六花さん、どうかした?」  すると、六花さんは外に飛び出した。ぼくは慌てて、後を追いかけた。 「六花さん!」  ぼくが呼び止めると、こちらを向いた。その顔は、今にも泣きそうだった。  雪が降り出していた。  ビル風にあおられるからか、雪は四方八方に舞う。  六花さんはまた、くるりと背を向けると、駅の方に走り始めた。  その後を追いかけようとしたが、雪が幾重にもカーテンを下ろす。  まるで六花さんに拒絶されているようで、今度はぼくの方がその場から動けなくなっていた。
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