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理不尽だと感じた。二人とも六花さんを愛しているのに、どうにかならなかったのか。
「六花さん、自分のせいで離婚したって、思うじゃないですか」
「そうやな、思ってるやろうな。夫婦はけんかしても仲直りして、家族として生きていけるんやって、見せてやらなあかんかったんやけどな。できんかった」
胸に大きな熱い塊を感じた。横を向くと、窓の暗い景色の中に、宙をにらむ自分の目が見えた。
「悪かったな。今日のことは忘れてくれ」
ぼくは信じられなかった。ここまで関わったのに、何なんだ。
「今さら忘れられるわけないですよ。ラーメン……ラーメンおごってください」
自分でもわけがわからなかった。けれど、そうでもしないとこのモヤモヤした感情がおさまらなかった。
「ラーメンか。そうか、わかった」
越田さんは社用車に乗っているので、一度会社に戻った。
結局、ぼくたちはラーメンを食べにいくのではなく、飲みにいった。
春浅く、夜更けはまだまだ寒かった。
いつまで飲んでいたのか、次の日、ぼくは風邪を引いていた。
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