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謎の常連客
今日も鳴っている。
私の働くカフェの前にある、広い公園。
その中央に、そびえるように立つ時計塔から、美しいメロディーが流れてきている。
12時、3時、6時、9時。
オルゴールが鳴る時間だ。
そして楽しい音楽と共に、文字盤の下が開いて、可愛らしくも綺麗な造りをした、小さな人形達が姿を現す。
音楽に合わせて、くるくると回る姿。
それには見るものを和ませ、微笑ませた。
特に目立つのが、一番前の王子様の人形。
黒髪に、青い瞳。
王冠を頭にのせ、白いマントを翻した凛々しい姿。
私はその人形を、一目見て気に入っていた。
だからなのだろう。
同じ姿をしたお客さんが、どうも気になってしまう。
ガチャ
チリンチリン……
オルゴールと共に聞こえた、来客を告げる鈴の音。
「……あ。」
噂をすれば、あの人だ。
3時。
オルゴールが鳴る時間。
必ず来店するお客さんが、今日もやって来た。
黒檀のような黒髪。
アクアブルーの瞳。
日本人離れした、端正な顔立ち。
白いシャツに白いパンツ。
とにかく白一色の服装。
この名前も知らないお客さんを、私はひそかに、王子様と呼んでいる。
王子様は、いつも同じものを注文している。
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