きっかけは

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何気ない質問をぶつけた。 それに、リヒトさんは困った顔をし、言い淀む。 もしかして、何か不味い事を言ってしまったのかもしれない。 「あの、何だかすみません!言いにくいなら別に……。」 「いや、そうではなくて……その、俺はケーキが好きではないんだ。客のくせに、失礼な話なんだが。」 「え!?あ、いえ、お気に召さらず!」 ケーキか好きではないのに、ケーキを食べる? その心理は理解出来ない。 そう思っていると、リヒトさんが答えを話してくれた。それはとても寂しげに。 「思い出の味なんだ。彼女と最後に食べたのが、ここのケーキだった。」 「彼女さんと……。」 私は声のトーンを落として、呟くように言った。 これだけイケメンなのだから、彼女ぐらいいるだろう。 問題は最後と言ったところ。 「……彼女さんとは今は?」 「3年前の嵐の日に事故で……。」 「す、すみません!!それ以上は大丈夫です!」 聞いといて止めたのも失礼だが、根掘り葉掘りプライベートの事を聞くのはもっといけなかった。 彼女は、多分だが故人となってしまったのだろう。 愛した人との思い出の味を求めて、カフェに来ていたのか。 知らなかったとはいえ、辛い事を思い出させてしまった。 「あの…すみませんでした。」 「気にしないでくれ。俺から話した事だ。それに、誰かに話を聞いてもらいたかった。」 ふっと笑う姿に、私は不覚にもどきりとした。 「彼女は生まれた時から、一緒にいたんだ。お転婆で甘い物好きの食いしん坊。でも誰よりもキラキラと輝いて見えた。心優しくて、楽しい人だったよ。」 「……愛していたんですね。」 「あぁ、心からね。勿論今も。」 彼は私をじっと見つめながら、言った。 寂しげだが、固い意志が籠っている。
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