お姫様の行方

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その後、時計塔は直され、俺も含め人形達は拾われていつも通り、時間を報せる音色に合わせて踊る。 いつもの日々だ。 ただ1つの変化をのぞいて。 マリアがいない。 俺の心は深く沈んだ。 彼女はどこに行ってしまったんだ。 誰にも見つけて貰えない場所に、落ちてしましまったのか。 それとも壊れて、処分されてしまったのか。 そんなのは嫌だ。 彼女に会いたい。 俺の声が届いたのだろうか。 「こんなところに時計塔があったのねー。人形可愛いなぁ。」 聞き覚えのある声。 美しい透き通るような声。 艶やかなブラウンの髪。 エメラルドグリーンの大きな瞳。 そしていつも励まされた、明るい笑顔。 マリアだった。 人間だったが、あれは間違いなくマリア。 マリア!戻って来てくれたんだな。 でも何故人間になっている? それだと、一緒に踊れないじゃないか。 しかし、俺の声はマリアには聞こえていない。 「あ、いけない。面接に遅れちゃうわ。」 そう言って、彼女は背を向けて行ってしまう。 待ってくれマリア!! どこへ行くんだ! 何故俺がわからないんだ! 勿論聞こえはしない。 叫んだところで、人形の声は届かない。 そして彼女は、公園から近いカフェに入って行ったのだ。
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