二章【真面目な仕事精神で】

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続いて、二人分の声が長い廊下にこだまする。 「ブルノール、あのままではもたんぞ。 つまらんん者に構っている暇があるのならば、お体に気を使って欲しいものだ」 「テノール、あの方にはあの方なりのお考えがあるのさ。 俺たちみたいなのが口を出しても、何の意味もないだろうよ」 「ブルノール、そうは言っても見過ごせないぞ。 俺が祭司として働き始めてもう半年。お見かけするたびに体調が悪くなっている。 この国唯一の指導者であるあの方に、今倒れられると困る!」 「テノール、無理はいうものではないさ。あの方は今やらねばならぬことが山の如しなのだよ。 僕らは黙って、あの方の行く末を見守るべきだろう?」 高低差の激しい声が間断なく続く。 低い声の男はどうやら大司教の体調を気遣っているようだが、つまらん者とは一体誰だ?と、咄嗟に柱の陰に隠れたカルシンとスャムは首を傾げた。 そんな二人に気づくそぶりもなく、話は続く。 「テノール、ところでそのつまらん者っていうのは一体どんなやつなのさ。 大司教様のお気に入りなのだと噂では聞いたけれど、本当なのか知りたい」 「おおブルノール。お前が他人に興味を示すなんて、俺は嬉しいぞ。 けれどあいつは本当に気に入らないやつだ。 大門でもたもたしている所を捕まえた時から、食えないやつだとは思っていたが、異教徒なんぞになぜ大司教様が気をかけるのか、全くわからない。 お前も兵の仕事が終わった後、神無の間に来るといい、あいつの辛気臭い顔が見れるぞ」 異教徒、という言葉にスャムとカルシンは敏感に反応した。 男、恐らく兵と祭司と思われるふたりの立ち話に、スャムはさらに聞き耳を立てる。 しかし次の言葉は聞こえず、代わりにばしっと何かを叩く音が聞こえた。 「さ、祭司長殿!」 慌てたような声とともに、怒気をはらんだ怒鳴り声が轟いた。 「馬鹿者!職務中に何をしている! いくら兄弟だからと言って、神殿内で立ち話など以ての外!」 「申し訳ありません!」 その後、スャムとカルシンが唖然と見守る中、テノールブルノール兄弟は延々と説教されたのだった。
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