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あれは、僕がまだ幼くて、なにもしらなかった頃の話です。
今は亡きプルウドラで、僕は生まれ育ちました。
おや、不思議そうな顔をしますね。
貴方は歴史にも通じているようだ。
ご存知でしょうが、プルウドラは典型的な宗教国家でした。
神を崇め、神のみにその身を捧げ、最低限に質素な生活を。
そんな国の、裕福でも貧乏でもない平凡な家に、一人っ子として僕は産まれました。
母も父も農家で朝から晩まで働き、昼と夜に神様に祈りを捧げる。
神を心から信奉していた両親は、穏やかで優しく、悪いことは悪いと言える素晴らしい人たちで、小さな頃からそんな二人の背中を見て育った僕は、立派な信徒として生きることを夢見ていましたよ。
ご近所さんだった、祭司の夫妻と二人の兄弟とも、とても仲が良かった。
弟の方は僕と同じ歳で、同じ養育施設にも通いました。
名前は…たしかルーなんたら君だったような。
定かではありませんが。なにせあまり仲は良くなかったですから。
兄は僕よりもだいぶ年上で、一度か二度しか話したことはありませんね。
けれど、弟への溺愛ぶりはよく覚えています。
弟も愛された分、お兄さんによく懐いていました。
一人っ子の僕としては、羨ましい限りでしたよ。
しばらくの交流ののち、お兄さんの留学が決まりました。
隣国のハルハンとの国境に位置する国際学校へ、兄は旅立ちます。
泣き笑いで見送っていた弟君の顔は、今でも時折ちらつきますよ。
実にいじらしい、可愛い子でした。
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