プロローグ

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学生の頃に戻りたい。年を重ねるごとにその想いは誰しも強くなる。 あの日、あの時、あの瞬間に、もう一度戻れるのなら。大人になった現在の自分なら、様々な事に対して勇気を振り絞り行動することが出来るだろう。 いつのまにか社会に出て世の中の広さを知る程に、発言には責任が付き纏い、否定される事を恐れ、萎縮し言いたい事を言葉にできない。 そんなあまりにも小さな現在の自分の世界を飛び出して、あの頃に帰りたいと誰もが思う。 あの限られた時間を本当の意味で自分たちがどれだけ無駄に浪費してしまったのか、それは学生の頃には決して気付くことはできない。もし学生の身分でありながらその事に気付いてしまったのなら、それは誰よりも不幸な学生生活だろう。 出来る事ならあの場所でもう一度過ごしたい。そんなことを思わせるあの空間。 誰しも生きている限り永遠に後悔し続ける程の成し得なかった事があの時間には存在する。 何者も干渉することを許さない遡行の扉。 これはその扉に手を掛ける物語。
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