第5章 麻布十番の惨劇(前)

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「我々は太古の昔より人と同じように進化してきた。そして少数派の我々は常に虐げられ、踏み付けられる生き方に甘んじてきた。だが、我々には特別なアドバンテージが与えられていたのだ。」  神島が語る。タロットの列は編隊を成し神島を狙う。四方八方に散らばるとそれぞれの角度から神島を襲った。 「無駄だ。」 神島が片手を前に掌を広げるとカードは空中で燃え尽きた。 「我らは人の血を吸うことで長く生きられる。そう、何百年でも若さを保つことが出来るのだ。これこそ、神が与えたもうた力。少数ゆえの優越性なのだ。」 「黙れ。」  テレジアが遮る。神島の前に展開するカードが面となり、テレジアの呪文と同時にテーブルの上の聖水が幾百の雨粒となって立ち上った。 「お前らが人だというなら、地獄に落ちるがいい。」  四方が鋭利な刃となったタロットが神島に突撃した。そして聖水の雨粒が水の針となって降り注ぐ。  短針銃に神島の肌は焼け、タロットの刃が神島を切り裂いた・・・はずだった。が、刃物も針も神島の数センチ手前で何かに捉えられ空で制止している。 「私には勝てんぞ。」  神島隆一が強力な気を放射する。カミソリや針など為す術もなくバラバラと飛んで逆にテレジアを襲う。更にヴァンパイアのサイコキネッシスがテレジアに強烈な一撃を加えた。テレジアがテーブルもろとも後ろにひっくり返る。     
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