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またテレジアが力を込めエネルギーの籠を狭めていく。
しかしテレジアは疲労の色が濃かった。気力はあっても体力が保たない。押しつ押されつの攻防の末、魔法陣は描かれた円の大きさにまで戻ってしまっていた。
だが、捕獲の効力はまだ生きていた。ちょうど籠の中に閉じ込められた猛禽のように神島が口元をゆがめ、長い吸血の牙をぬらぬらと光らせていた。
「ここまでのようだな。この籠が解ける時がお前の死ぬ時だ。近衛隊長のもとへ、警察署長のもとへ、帰るがよい。」
今や神島は余裕を持って立っていた。魔法陣が破られるのも間もなくだ。
そしてテレジアは、娘を人質に取られながらも歯軋りしながら国のため国王のために戦った気高き近衛隊長の父の元へ、そして国を滅ぼさんとうごめく悪魔の戦士たちを押し止めた勇敢な警察署長の夫ヨーゼフのもとへ旅立つ時が近づいた。
テレジアは気力も萎え、力尽きようとしているのが自分でも理解できた。
「これまでか・・・、無念。」
六本木アクアマリン。そこは本当の意味で天国になっていた。神島隆一と一味たちによって吸血鬼にされたホステスたちとボーイたちが夜毎宴席を盛り上げていた。
柳澤が社長を補佐して店は繁盛している。大いに経営手腕を発揮し客が絶えなかった。
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