第5章 麻布十番の惨劇(前)

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「いらっしゃいませ。」  午後11時、3次会とおぼしき酔客がクラブのドアを開けると、早速クラークが笑顔を振りまく。  北出みゆきがいなくなって、客の顔を覚えているクラークがいなくなったのは痛かったが、1ヶ月もすれば対応は慣れたものだ。 「ご案内します。」  ボーイが呼ばれ、奥の席へ3人を案内する。 「なんだか、雰囲気変わったよね。」 客の一人がボーイに話しかけた。常連なんだろう。 「はい、オーナーが変わりましたもので。」 ボーイの対応はそつなかった。  実際店内はやや暗めに照度設定され、温度も高め。ホステスたちは薄手の露出の激しいドレスで対応する。  早々にボトルが運ばれてきたが、すでに管理などしていなかった。酒のボトルも2種類しか置いていない。ウィスキーか焼酎だ。どっちかを持ってくれば済む。 「ご指名はございますか。」 「ミカちゃんをお願いします。」 サラリーマン氏が答える。 「申し訳ございません。ミカは退店致しまして・・・。」 「そうなの? じゃあ、可愛い子を頼むよ。」 「ありがとうございます。ごゆっくりどうぞ。」  ボーイがそう言って下がると同時に女性が一人席に着く。 「いらっしゃいませ。くるみです。宜しくお願いします。」     
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