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「先生方や研究室の学生が論文を印刷したりする設備があります。あと、物資の倉庫とか。」
被害者は若い女で床に仰向けに倒れていた。胸に恐らくは一突きにされたであろう大型のナイフが刺さっている。警備員はトイレの外から怖々中をのぞき込んでいるだけだ。
「巡回で廻ってきたら人が倒れていて・・・。それで110番しました。あ、警察が救急車も呼んでくれるって。」
その言葉を裏付けるように外で救急車のサイレンの音がした。
「あ、いいですか?」
警備員はこれ幸いにその場を逃げ出し走り去った。
「そんなに時間経ってないね。まだ体温が残ってる。」
阿木が手袋を外した手で死体を触りながら指摘する。
「見たところこれ以外に大きな外傷はなさそうだし、ナイフで一突きってか。」
「おかしいな。」
被害者を俯瞰していた生澤が呟く。
「おかしいって?」
と阿木。
「鑑識さんの到着を待つまでもなく、このナイフが凶器だろう。それにしちゃ出血が少なくないか?」
言われて阿木も辺りを見廻す。心臓にまで達していそうなナイフの周りにも血はほんの少ししか付いていない。
「別の場所で殺されてここへ運ばれた?」
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