第2章 吸血鬼(後)

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 溝端は背筋が寒くなるのを感じた。そしてこれがまさに穐本が言う六本木戦争の序章だったのだ。  亀山会計事務所。亀山浩一郎がひとり次々と運び込まれる棺を眺めている。棺はそれと分からないようにカモフラージュされ屈強な男たちの手によって事務所の中へ運び込まれていった。1階のカフェ客も誰も気が付いていない。運び込まれた棺は次々と事務所の床に並べられていった。 「その時が来るまで、ゆっくりと眠るがいい。」  雑居ビルの2階、会計事務所の奥の部屋の床は棺でいっぱいになった。1つだけが日本語の名前で、他はそれぞれ外国語の名前が書かれた札が棺の上に付けられている。やがて作業の男たちが運んできたトラックで引き上げると、亀山は事務所に鍵を掛け六本木の街へ消えていった。
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