第15章 六本木ドラキュラ城

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 何かに気を取られたように一瞬空を睨んだ神島が呟いた。そしてがっくりと首を折った。ゆっくりと膝を突く神島隆一。 「覚悟!」  そう叫ぶと杭を前方に向け、頭を垂れた神島に向けてマリーは突進した。 ガラガラガラガラ!  その時激しい雷鳴と共に3人がいた中世ドラキュラ城が大きく揺れた。マリーは床に手を突いて堪えた。蘭も膝と肘で四つ這いになってしがみついた。やがて揺れは収まり、意識もはっきりした蘭は自らナイフを抜き取った。傷からの出血は止まり傷口は自然と塞がっていった。  突然辺りが明るくなった。そこは六本木ヒルズの48階ファーイースト・ファンダメンタルズの社長室だった。 「どういうこと?」 マリーが叫んだ。 「どうやらお前の呪法が解けたようね。六本木が元に戻ったんだわ。」 蘭が無言で下を向く神島に言い放った。 「本当?」 蘭の方を見るマリー。 「もはや木偶人形にも等しい。マリー、神島にとどめを!」  再び立ち上がるとマリーは黄金網の間から跪く神島の心臓目がけて杭を突き刺した。神島は激しく蒸気を噴き出しながら悶え苦しんだ。あまりに激しい蒸気の噴出に神島の姿も見えない。 「マリー!」  蘭が叫んだ。数秒の後蒸気は収まり男が社長室の床に横向きに倒れていた。 「ランさん。」 「やったわね。マリー。」     
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