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ひとりの刑事が早瀬に言った。
「私は神島の顔をメディアでしか見たことがないが、少なくとも水上じゃありませんでした。」
大島治五郎が言う。
「蓋を開けろ、神島なら飛んで火に入る夏の虫だ!」
早瀬は大島と棺桶の蓋に手を掛けた。力任せにそれを持ち上げる。だが、蓋はびくとも動かなかった。何人かで持ち上げようと試みたが無駄だった。それどころか棺桶自体が異常に重く動かすことも出来なかったのだ。
「くそう、この中に神島がいるというのに。」
地団駄踏む早瀬の携帯が鳴った。
「どうしたの? 早瀬さん。」
「やあ、マム。ここに神島がいる。」
電話は麻布十番の我孫子悦子からだった。
「え? 神島が? どうして? まだマリーたちと連絡が付かないのに。まさか・・・。」
「いや、マム。私たちは水上を追ってこの部屋に来た。そして確かに水上を見つけたんだ。ところが、いつの間にか神島が出てきて、ベッドルームにあった棺桶に入ってしまった。水上はどこを探してもいません。この部屋からはどこにも出られないはずなのに。正直なところ混乱しています。」
早瀬はあらましを悦子に報告した。今や悦子は名実ともに司令塔だった。
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