第15章 六本木ドラキュラ城

29/35
前へ
/383ページ
次へ
「棺桶は普通の木製のように見えるんだが、とても重くびくともしない。蓋は中から閉まってしまって開きません。」 早瀬が報告を続けた。すると、 「ならば、棺桶ごと木っ端微塵にしてしまいましょう。」 悦子が恐ろしいことを平然と言い放った。 「もし、私の娘たちがその男に殺られてしまったのだとしたら、絶対に生かしておかない。」 「でも、マム、どうやって?」 「香西さんを向かわせます。プラスチック爆弾を持って。」 「マム・・・。了解しました。」 電話が切れた。 「マムが怖くなってきた・・・。」 早瀬が呟く。 「誰なんです? マムというのは。」 大島治五郎が首を傾げた。 「私たちのボスだ。」 「警視総監のことですかね?」 中条が大島に小声で聞いた。大島は無言で頷いただけだった。早瀬は無線で部下に呼びかけた。 「上下階にいる人間を至急避難させろ。あと29階の人間もだ。いいか、人間だけだ、避難させるのは。急げ。」  ものの数分で香西がSITの部下を連れて現れた。 「これですか。この中に本当に神島が?」 香西、早瀬のふたりが沈黙の棺桶を見下ろしている。 「ああ、間違いない。私だけじゃない皆も目撃している。」 「すぐにセットに掛かる。大丈夫だ、さっきやったので感覚は分かっている。ビルを吹っ飛ばすことはない。この棺桶だけをバラバラにしてやる。」     
/383ページ

最初のコメントを投稿しよう!

23人が本棚に入れています
本棚に追加