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「棺桶は普通の木製のように見えるんだが、とても重くびくともしない。蓋は中から閉まってしまって開きません。」
早瀬が報告を続けた。すると、
「ならば、棺桶ごと木っ端微塵にしてしまいましょう。」
悦子が恐ろしいことを平然と言い放った。
「もし、私の娘たちがその男に殺られてしまったのだとしたら、絶対に生かしておかない。」
「でも、マム、どうやって?」
「香西さんを向かわせます。プラスチック爆弾を持って。」
「マム・・・。了解しました。」
電話が切れた。
「マムが怖くなってきた・・・。」
早瀬が呟く。
「誰なんです? マムというのは。」
大島治五郎が首を傾げた。
「私たちのボスだ。」
「警視総監のことですかね?」
中条が大島に小声で聞いた。大島は無言で頷いただけだった。早瀬は無線で部下に呼びかけた。
「上下階にいる人間を至急避難させろ。あと29階の人間もだ。いいか、人間だけだ、避難させるのは。急げ。」
ものの数分で香西がSITの部下を連れて現れた。
「これですか。この中に本当に神島が?」
香西、早瀬のふたりが沈黙の棺桶を見下ろしている。
「ああ、間違いない。私だけじゃない皆も目撃している。」
「すぐにセットに掛かる。大丈夫だ、さっきやったので感覚は分かっている。ビルを吹っ飛ばすことはない。この棺桶だけをバラバラにしてやる。」
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