第3章 千里眼(前)

19/22
前へ
/383ページ
次へ
麻布中央署の田所勘助刑事は穐本の契約していた週刊民衆の編集部を出ると六本木へと向かっていた。  民衆の編集長との話には収穫があった。穐本泰之は六本木を支配する組織の取材に忙しく、特に組傘下の中堅団体大島一家と親交があったようだ。ここから情報を得ていて、今やヤクザ以上に幅を利かす半グレ集団京浜連合やなかなか正体の見えない外国人の組織を洗っていたという。 「あそこら辺だとむしろヤクザ屋さんは真っ当な方です。むしろ半グレ集団や不良外人なんかが抗争に明け暮れてます。先日の爆弾事件なんかもヤクザが係わるような犯罪じゃない。半グレか外人の仕業でしょう。」 「で、穐本はどんな見当を付けてたんですか?」 「記事を見て貰えば分かりますが、不良外人の組織モスク・グループに注目していたようです。」 「モスク・グループですか。」 「穐本氏の言い分では、名前のモスクとは裏腹で構成員は中東系とは限らなかったそうです。」 「といいますと?」 「これは次の記事で明らかになる予定だったのですが、モスク・グループの中心はイラン人で、バングラデシュ、シンガポール、マレーシアなど多彩だそうです。最近そこへシリアやイラクなど中東系の過激派が合流し半グレ集団などと争っていたそうです。」     
/383ページ

最初のコメントを投稿しよう!

23人が本棚に入れています
本棚に追加