第3章 千里眼(前)

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 その辺は警察も掴んでいることだった。だから六本木喫茶店爆破事件にもモスク・グループが係わっている前提で捜査を進めている。 「何か具体的な、例えば人の名前とか企業とか、穐本は話していませんでしたか?」  常に相手にしゃべらせる、これが聞き込み捜査の鉄則だ。自分は情報を出さず、相手からは最大限の情報を引き出す。田所は心得ていた。そして重大な言葉を聞き出す。 「そう言えば、亀山会計事務所へ行くとか言ってたな。」  週刊誌の編集長は手帳を繰ってメモを見る。以前穐本と打ち合わせた折のメモ書きとのことだ。その時は何気なく書き留めた言葉の中に、亀山会計事務所というのがあった。 「亀山会計事務所・・・?」 「ええ、確か六本木ヒルズの辺りにあるとか言ってましたね。」 「亀山会計事務所ね・・・。」 「フロント舎弟かなんかですかね? 半グレや不良外人に会計事務所が必要とは思えませんが。」 編集長の疑問には何も答えず、田所は話を切り上げた。 「ありがとうございました。こちらで当たってみます。」  そういうと田所は編集部を後にした。ところが週刊民衆の社屋を出ようとした時に携帯に着信があった。今別れてきた編集長からだった。     
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