第3章 千里眼(前)

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 田所勘助は自らの刑事の勘を信じて強引に事務所の中に押し入った。 「あ、ちょっと。」 会計事務所の中はスチールの棚が2つ、デスクと椅子が2脚に来客用にしてはみすぼらしいソファとテーブルの応接セットが置かれていた。そして奥にもう一つ部屋がある。 「失礼しますよ。」 そう言うと田所はいきなりその扉を開けた。このビルは間口は狭いが奥行きはあるようで部屋の奥は闇に消えていた。扉の横にあった照明のスイッチに触れる。蛍光灯が一斉に点灯し、そこには・・・。  が、そこで田所の意識は遮断されてしまった。もんどり打って床に突っ伏す田所。 「先生、今刑事が来て・・・。はい、はい。分かりました。」 佐々木という優男が携帯電話で話している足下には田所が俯せになって気絶していた。ドアの脇に金属バットが立て掛けてあった。
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