第1章 吸血鬼(前)

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流れる汗を拭きながら阿木がバディの生澤に聞く。 「このビルに残ってると思うか?」 「いないだろうな。」 「そういうことだよ。」 東光大学西新宿キャンパス2号館の玄関を出たふたりはそのまま現場を離れた。  そして覆面の中。 「ビル狩りって何だよ? 山狩りの変形活用ってか。」 「俺たちの仕事じゃねえよ。」 阿木は再びハンドルを握り管内を流し始めた。 「歌舞伎町へ行こう。」 「ラジャー。」 生澤の提案に阿木は靖国通りに向けてハンドルを切った。  さっきまでの喧噪が嘘のような中目黒、水上翔太のマンション。名義は父親で水上が一人で住んでいる。 政治経済研究会の部室的な場所だった。そこへ酔いつぶれた美枝子が運び込まれていた。 「今日は会合に遅れてしまって済まなかったね。こいつは私からのお詫びの印だ。好きなようにして貰っていいよ。」  神島がカーペットに横たわる安野美枝子を蔑むような目で見下ろす。 「いいんですか? 神島さん。」 「ああ、構わないよ。タダやって終わりじゃつまらない。色々楽しんじゃってよ。」 3人は好色そうに微笑む。神島に人身御供にされた美枝子は何も知らず寝入っている。 「で、東光大の経済研の連中はどうするんですか?」  田中が神島に問いかけた。     
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