第4章 千里眼(後)

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「若い諸君の政治的提言にも大いに期待しているわけであります。今、日本は未曾有の危機に直面し益々政治の重要性は増すばかりです。そんな時に年寄りに国の行く末を任せてはいられません。」 演説は終わりかけてまた盛り上がって行く。 『そうだ、私がこの国を動かしていく。楽しみにしていて貰おう。もっともお前にそれを見届けることは出来まいが・・・。』  紅潮した顔でしゃべり続ける真田を見ながら神島は心の中で答えていた。  その時真田のテーブルに置いたスマホにメッセージが表示された。 『副幹事長、次の予定のお時間です。車にお戻りください。』 メッセージの後にはハートマークがあった。真田に新しく着いた秘書の岡部桜子からだった。  駐車場で待機する岡部桜子に梶原桃子がテーブルの下でメールを打つ。 『グッジョブ!(ハート)』 桜子は顔を赤らめると運転手に地下通用口へ車を回すよう指図した。  副幹事長が仰々しく退席した後、演壇には政治経済研究学生連合の代表が立った。意外にも代表は神島隆一ではなく水上翔太だった。神島は表に出ず、この連合を仕切るのは水上に任せた訳である。 「柳澤先生、もうその辺で。」  水上の学業成績などを並べ立てる世話役柳澤琢磨に笑顔で応じる水上。 「まず、このような学生連合を作ることにご賛同をいただき、またご協力いただいた皆様に厚く御礼申し上げたいと思います。」 水上が切り出した。     
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