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悦子はそう言って、テーブルの上に両手を載せて何かを撫でるような仕草をし始めた。
「お茶でも入れるわ。紀文堂のワッフルをいただいたのよ。マリー好きでしょ?」
テレジアはそう言うとキッチンへ引っ込んだ。
悦子は相変わらず両手で何もない何かを撫で回している、集中するように目を閉じて。やがて、うっすらと額に汗を掻き出す。
「これは・・・。」
悦子が目を開けると同時にお茶のセットを持ったテレジアが戻ってきた。
「何が見えたの?」
テレジアが問う。
「ううん、はっきりとしたものは・・・。ねえ、テレジアさん。あなたの言ってるのって吸血鬼?」
マリーがはっとする。
「ええ。」
テレジアがあっさり肯定した。
「どうりで。で、この吸血鬼とは何か因縁があるの?」
「ワラヴァニアにいた時に二度ほど・・・。その時に主人が亡くなったわ。」
「ワラヴァニアってルーマニアの隣国の?」
「ええ。若い頃エトランシュタットって言う街に住んでたわ。その後ルーマニアに移住したの。」
「そうなの。確かに吸血鬼はここへ来るみたいだけど、はっきりとした様子は見えなかった。でもとっても邪悪な感じが・・・。」
紀文堂のワッフルが配られて、お茶が入った。
「この吸血鬼、何か途方もないことを計画してるみたい。」
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