第4章 千里眼(後)

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 マリーは二人の会話に呆然としていた。まず父親のことを詳しく聞いたことがない。警察官だったことは知っていたが、ヴァンパイアとの戦いで死んだなんて・・・。マリーの父親は単に自殺したとだけ教えられていた。  そして我孫子悦子の能力に崇拝の念を抱いた。マリーは大好きなワッフルに手を伸ばすのも忘れて悦子の顔を凝視していたのだ。 「悦子さん。悪いんだけど、この日のこの店を透視して欲しいんだ。」  テレジアはスマホの画面を悦子に示した。そこはマリーもよく見るニュースまとめサイトで例の小森珈琲茶房の爆破事件のことが載っていた。またもはっとするマリー。 「この日の午後4時38分。この数分前からマリーの見ている先を見通して欲しいの。」 「分かったわ。ちょっと待ってね。」 そう言うと悦子は手提げ鞄の中から今度は水晶玉を取りだした。それはいつか割れてしまったテレジアの水晶玉より少し小さめの透明な球体。テーブルに黒い布を敷くとその上に水晶を置く。 「じゃあ。」 我孫子悦子は水晶の中を覗き込むように集中しだした。 「ああ、店の中に居るわ。結構混んでるわね。空いているのは1つ2つ、3つだけかしら? ああ、マリーちゃんがいるのは店の入り口の隣のボックス席ね。そうでしょ?」 「あの、普通にしゃべれるんですか?」 マリーが恐る恐る尋ねる。 「ええ、大丈夫よ。あの日の六本木の珈琲屋さんだわ。今は午後4時30分・・・。」     
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