第4章 千里眼(後)

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「いえ。分かってると思う。あれだけの能力を持つヴァンパイアが自分を狙った相手を見落とすとは思えない。」  新たに煎れた熱いお茶を前に、テレジア、マリー、悦子の3人はあの10月の夕方から現在に戻って来たことをようやく実感した。  六本木。通りを2本入った路地にある地味なビル、その6階にあるアクアマリンに政治経済研究学生連合の母体である帝都大学経済研究会のメンツが集まっていた。神島を囲む四天王、田中浩二、斎田俊夫、水上翔太と阿久津亮治だ。  アクアマリンは六本木で一、二を争う超高級店だ。連れてきたのは彼らの僕となった柳澤だった。柳澤行きつけのクラブである。  柳澤の顔で押さえたVIPルームに次々とシャンパンが運び込まれる。そこへ店のトップから順に6人の女たちが入ってくる。それぞれの席に着くと、部屋は欲望という思念が渦巻いた。  トイレに立った神島の後を追って阿久津が近づいた。 「まだろっこしいな。」 「うん?」 神島がゆっくりと隣を見る。 「やるならやるで力を使えよ。」 「まあ、それもいいが、こういうやり方も面白いだろ。」 「お前のやり方はいつもそうだ。ワラヴァニア王国の城で親衛隊の反攻に対峙したお前の戦略はなってなかった。」 「ずいぶん古い話だな。」     
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