第4章 千里眼(後)

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 神島が席を外した数分の間にアクアマリンはルビー色に変色していた。田中も水上も半裸状態のホステスにむしゃぶりついている。部屋の外にはボーイの二人が首から血を流して倒れていた。 「好きにするさ。」  ヴァンパイアたちは女の血を求めて店の中に散っていった。阿久津は女も男もなく喉首に食らいついていく。店の人間は誰も彼らに抗う術を知らなかった。いや抗うことは元々出来なかったのだ。 「遅くなりましたあ。」  惨劇の最中、店のレジ係北出みゆきが貸し切りとなっていたドアを開けた。そして状況を知る。ホステスたちは半裸または全裸で若い男たちに抱かれている。ボーイたちは首から血を流してそこかしこに倒れていた。  店長も白目を剥いてトイレの扉にもたれるように死んでいた。そう、みゆきには倒れている男も女も死んでいるように見えた。いったい何があったのか。  混乱した思考を断ち切って、みゆきは慌てて外へ飛び出した。そのあとを水上翔太が追う。路地を抜けて石段を駆け下りるみゆき。  恐怖にゆがんだみゆきの目には信号機の色が識別できなかった。六本木通りに飛び出したみゆきはムスタングに跳ね飛ばされて、道路に転がった。  水上はゆっくりと踵を返すと店に戻っていった。
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