第5章 麻布十番の惨劇(前)

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「六本木の喫茶店爆破事件もちょっとおかしいですよね。」 と阿木。生澤が再び阿木の顔を見る。 「吸血鬼かどうかは分からない。だいたい俺は吸血鬼には詳しくない。失血死だと言うことで、血を吸う怪物の仕業と考えただけだ。」 「怪物・・・。」 「妖怪というか、何というか、超自然的なものだ。いや、滑稽だと思うよ俺も。だが、これら事件を見れば見るほど刑事の勘がそう答えを導く。愉快犯や変質者や爆弾マニア、左翼主義者、そんな奴らの犯行じゃない。」 「あの、管理官いいですか。」  阿木が早瀬を遮って手を上げた。 「なんだ?」 「まだ、何の関連性も分かりませんが、我々が追ってる方でも気になることがあります。」 阿木は早瀬が核心に迫っていると確信しているようだった。その上で自分の推理を披露した。 「岡崎絵里花という女子高生です。」 「女子高生?」 と早瀬。 「はい。彼女は友達2名と爆破された喫茶店にいました。彼女の自宅は麻布十番ですから学校帰りに遊びに行ったとも思えますが、どうもそうじゃない気がする。」 早瀬の目を見ながら阿木が続けた。     
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